初日の夜のディナーは、ブイヨンからルイユまで全て真奈美お手製の本格ブイヤベースをメインに、瑛作の買い揃えた泡やヴァン・ド・ペイに合わせて添えられた色彩豊かなアミューズやドゥジェームまでもが並べられていた。
これらを実にカジュアルに平らげて行く大居と真奈美、その二人へひたすら給仕し続けるバトラー瑛作。
「おい執事!殻入れがないじゃなかっ!少し大きめの殻入れを用意しなさい!ボウルでかまわんよ。」
「ははっ!大変失礼致しましたご主人様っ!只今ご用意致します!」
確かに、豪華なブイヤベースには瑛作がスーパーで買い漁って来たムール貝やアサリ、骨の多い根魚など多くの出汁の元とも言える殻ものが使われている。
にも拘らず、それらを除ける器を用意する事を失念してしまった点について、瑛作はご最もという深い礼を述べ、いそいそとキッチンから適当な大きさの深皿を持ってきた。
「なんだこれは?」
「はい、ボウルではテーブルの見栄えも良くないと思い、こちらの深めのお皿をご用意させて頂きました。」
「誰が皿を持って来いと?」
「あっ、いえ、、、その、、、殻入れをと、、、」
ドスンっ!
「うぅぅぅぅぅ、、、」
「勝手な気を回すんじゃない!私は適当なボウルで良いと言った筈だ。お前は言われた通りの物を持って来ればいいんだよ!
鳩尾へ食らった不意の蹴りは、見事に瑛作の嗚咽を誘ったが、今そこをアピールしたとて何の同情も配慮も許されまい。
痛む鳩尾を若干庇いながら斜に構え、瑛作は急ぎ足でステンレス製のボウルと取り換えて戻ってきた。
「お待たせ致しました、ご主人様」
(さて、この見栄えのしない陳腐なボウルをどこへ置く?)
そんな心の戸惑いをぎこちなさで表していると、大居が間髪入れずに指示を出す。
「床へ置きなさい!」
「ゆ、床へ、、ですか?」
「聞こえないのか?刃向うのか?それとも言葉の意味がわからんのか?」
「い、いえ、、、では、床へしつ、、れい、、、致します。」
躊躇いを隠しきれないバトラー瑛作は、この時点で薄々の察しはついてはいたが、ここは敢えてのぎこちなさでステンレスのボウルを大居の椅子の下へそっと置いた。
「この料理に太刀打ち出来そうな良質の白を開けなさい。」
淡々と指図する大居の仕草や振る舞いは、流石大手企業の創始者である。実に無駄も無くスマートで段取りが良い。
下僕の分際ながら、絶大なる関心と敬意で以って、瑛作はその命令毎に一層の服従心が芽生えて行くのが自身でも怖い位によく判る。
「ははっ、ご主人様、少々お待ちを」
既に、瑛作になどに興味もない大居は、向かいにエロい下着姿でクロスティーニとヴァンムスーを楽しむ真奈美との会話をにこやかに弾ませていた。
「それにしても、真奈美にこんなにも料理の才能があったとはな、フフフッ。これから楽しみだよ!」
「あ~らご主人様っ、嬉しいわ。ご主人様の為なら私張り切ってリクエストにお応えしますわよ♡」
「ふっふっふっ、それは実に素晴らしい、性奴隷兼ワイフさながらと言った所だな。愛してるぞ、真奈美。」
「きゃぁ~~、ご主人様っ!!私もすっごく愛してます♡」
テーブル越しにキスを交し合い、改めてフルートに残ったヴァンムスーで乾杯をする二人。
瑛作はそんなラブラブの二人の為の白ワインを、薄くて今にも割れそうなグランヴァングラスと共に持ってきた。
「ご主人様、真奈美様、こちらギガルのコンドリュー、2010年でございます。如何でしょうか?」
トーションへ横たえたよく冷えたローヌの白ワインを、ソムリエよろしくの立ち居振る舞いでサーブする瑛作に、大居もそれとなくの関心さの眼差しで受け応えてみせる辺りは流石の一言だ。
「ほう、ヴィオニエ種を選んできたってわけか、プロヴァンスかブルゴーニュで来ると思ったがコレも悪くない。いいだろう、テイスティングして注ぎなさい。」
「かしこまりました。」
一礼の後、すぐさまキャップシールにラギオールの刃を入れ見事な手捌きで抜栓をして見せる瑛作。
コルクから香るスミレのような芳しさは、真奈美の足臭には到底及ばぬ芳香ではあったが、コレはコレでうっとりとさせられる実に華やかな香りといって良い。
テーブルにコルクを置き、大居にもその芳しさを共有して頂くと、抜栓直後の上っ面部分をテイスティンググラスに注ぎ、その状態を確かめた。
「充分にお愉しみ頂ける状態かと存じます。」
「そうか、では注いで貰おうか。それと、お前ももう少し大きめのワイングラスを持って来なさい。」
「はい、ご主人様。恐縮です」
まさかのご慈悲に意気揚々と120㏄程の量を二人のグラスに注ぎ終え、再びキッチンへワイングラスを取り換えに走る瑛作。
「まぁ、素敵!とっても華やかなワインだわ!」
「そうだね、真奈美のお手製料理に勝るとも劣らぬ味わいは流石だな」
「ご主人様っ、私とっても幸せです♡」
「ふふふ」
何とも繊細な距離感の二人の会話は、悠久の悦楽とも言わんばかりのオーラを存分に放ち切っていた。
片やバスローブ姿、そして向いの淑女もまたランジェリー姿という妖艶卑猥な格好で極上の料理とワインを執事まで従えての嗜好は、到底グランメゾンでは味わえないラグジュアリーである事は言うまでもない。
▽嬢王達の残虐お仕置きパーティー▽
「お話し中失礼致します。」
遠慮深そうに空のワイングラスを片手に主に頭を下げながらそう告げて戻って来た。
「グラス持ってきたか。ふふふ、それもボウルの横に置きなさい。」
二度目の躊躇は鳩尾への蹴りどころの話では済まされない。
そう察知した瑛作は、今度ばかりはそう命じられるや否や直ぐにグラスを床に置かれたステンレスのボウルの横へ置き、そのまま跪いて見せた。
「ぷっ!なにこいつ!ドーベルマンにでもなったつもり?きゃははははっ、ウケるんですけど」
真奈美は、大居の椅子の横にまるで耳も尻尾も切られた猛犬にでもなったかのような顔つきで、その従順さを上目使いで見せる亭主、瑛作の哀れな姿に滑稽さを露わにした。
「さて、お前にもお裾分けをやらんとな、ふっふっふっ」
想定内とも想定外とも言えるこの展開に、瑛作はただただ従順さを体一杯で表現する程度しか方法が無かった。
「ご、ご主人様のお零れを頂戴出来るだけでも身に余る想いでございます!ありがとうございます!」
「真奈美、貝殻と魚の骨、あと適当な添え物をボウルに入れてやってくれないか、それとお前少し咀嚼して吐き出してやりなさい。」
「わかったわ、ご主人様。」
言われるなり真奈美は卓上の料理から次々と残されそうな部分や殻類を床のボウルへ放り入れ始め、更にはあらゆるものを噛み砕いてぐちゃぐちゃにしたものをボウルへ吐き出して行く。
それこそグランメゾンは愚か場末のビストロやバールですら許されない行儀の悪さは、正しくここだけの異世界だ。
真奈美の行儀の悪い行為はやがて紳士で鬼畜な変態Sの大居にも派生し、大居もまた咀嚼物をボウルへと吐き、更には痰や唾液までも吐き出す始末は最早ディナーと呼ぶには至らない狂乱の宴だ。
「ふふふ、随分とご馳走が盛られて来たじゃないかっ!良かったな?お前。」
「・・・・・・・・はい。ご主人様」
涙目でボウルに投げ込まれた生ごみのような即席餌を目の当たりにした瑛作は、この状態であの高価な白ワインなどどう転がっても注いではくれまいといった、実に最下等マゾ男らしい予測と悟りを見出してい居た。
「グラスを出しなさい!」
大居の一声をまるで待ち詫びて居たかのよな即効で、瑛作は床のワイングラスの脚に手をやった。
イエス様から洗礼を拝受するヤコブやユダさながら、グランヴァングラスを眉間よりやや上に掲げ、その慈悲を待つ瑛作。
「さて、お前にはワインより遥かに上級なものを注いでやるぞ。わかるな?受けろ」
言いながら、バスローブの紐を解き、先ほどまで真奈美と瑛作にたっぷりと奉仕させていた男根を掴み始めた主。
「はい、、、ありがとうございます」
これ以上の戯言は無用だ。
瑛作は決死の涙を浮かべながら覚悟を決めるしかなかった。
チョロチョロチョロ・・・
出だしの数滴こそ遠慮がちではあったものの、数秒後には勢い良くワイングラスへと注がれる黄金色のアンモニア。
泡立つそれはまるでビアカクテルのパナシェでも思わせるような色合いとシルエットだ。
不思議なもので、こうして高価なワイングラスに注がれてしまうと、まともなビバレッジに見えてしまうから恐ろしい。
560㏄級のグランヴァングラス、そこへ半分以上は注がれた所で大居は一旦尿を意識的に止めた。
すると、次は先ほどの生ごみ容器、即ちこの後の瑛作の主食となる筈の餌皿へ、アプレの小便をジョボジョボと注いでゆく。
「うわぁぁぁ、お茶漬けみたい!!良かったわね、お前!」
「うぐぅぅぅぅ、はい、、、、真奈美様」
としか返答の無いこの状況は隅に追い込まれた逃げ場のない海老のようなもの。成す術も有りはしない。
「どうだ、真奈美特製の料理の残飯と主の聖水で完成だ!お前の為の特製マンジェといった所だな!ぶっはっはっはっはっ!!」
情けなさはともかく、この屈辱感はやはり同姓である主からの小便だからか。
躊躇や混乱の次元が下がりすぎている瑛作は、そんな最下等ならではの迷いに陥っていた。
「さて、改めて乾杯しよう」
注がれた男の小便入りのワイングラスを手に、言われるがまま頭上の紳士淑女の交わすグラスに合わせて乾盃を添えた。
覚悟を決めた奴隷男瑛作は、注がれた同姓の黄金色した泡立つ小便をゴクゴクと喉から胃へと流し込んだ。
まるでワインを飲むようにグラスの脚に指を絡ませ嗜んではみるものの、強烈な苦みや酸味にその下等な現実的身分を痛感せざるを得なかった。
こういった別の意味での高圧的な大居の調教は、実に効果的で真奈美もその巧みさに惚れている。
「相変わらず鬼畜ですこと。うふふふふ、素敵だわ、社長!」
「まぁ、容易いものだよ、真奈美が既にここまでこいつを躾てくれているからこそさ、真奈美の為ならこいつはどんな事でも受け入れるだろう。それくらいお前さんを愛しているようだな、ふふふ、若干嫉妬心すら覚えるよ」
「あらやだ、嫉妬だなんてやめて下さいな!私はご主人様のものですわよ♡」
「ふふふふふ」
気が狂ったようにボウルの尿漬け餌へも既に貪り食らう家畜以下の物体など、とっくに興味もない二人は男女の会話と極上のディナーを続けた。
不味い、、、とにかく不快な味がする。嗚咽感と格闘しながらも瑛作は必死でその魚介の出汁と小便漬けされたこの世のものとは思えない家畜餌を貪り、心の中でとにかくこう誓うのだった。
(真奈美様とご主人様は神様、全てのご命令に従えばきっと幸せになれる。どんな事でもお受けしなければ、どんな惨めな事にも感謝しなければ、、僕は奴隷、、僕は執事、、、僕は便器、、、、僕は、、、、ゴミ箱。。。)
ゴツンっ
そう心に何遍も誓う畜奴の頭を無言で踏みつけディナーを愉しむ大居は、もう片方の足先で向かいの真奈美のマンコを弄り始めていた。
「嗚呼、、、ご主人様ぁ、、いやぁ~んっ、き、気持ちイイですぅ」
「真奈美、どうだ、お前の亭主は俺の小便をこんなに嬉しそうに飲んでるぞ?」
「あぁぁぁ、こんなゴミの事なんて聞かないで!イヂワル!!あたしはご主人様を愛してますのよ!!」
「ふふふ、知ってるさ。可愛い奴だな真奈美は。おい!ゴミ亭主!そういう事だ、わかったな!お前は私たちの為に存在するただの所有物と思え!いいな、これからたっぷり奴隷以下にコキ使ってやるからな!」
「ははっ、ご主人様、そして真奈美様に所有して頂けるのでしたら、私はどのようなご命令でも喜んでお受け致します!」
瑛作の放つ言葉に嘘は無かった。
ただ、その言葉の理解の薄さに後悔する事となろうとは、この時の瑛作には全く予知する事など出来なかった。
全ての小便、そして小便漬けの餌を何とか数十分かけて平らげた瑛作は渾身の礼を大居に告げる。
「ご主人様の高貴なる黄金水様を頂けて幸せでした。本当にご馳走様でございます。ゲップっ」
臭いゲップを止められず、当然二人を怒らせてしまった罰は、瑛作を更なる下等身分へと貶められるものとなってしまうのだった。
続くかも。。。?
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▽猟奇的な飼い主02▽
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