バトラー亭主 ①「ねぇ、お前、今日の私の予定は?」
「はい、奥様、本日はお仕事はお休みでございますが、10時より取引先の代表取締役、大居様とのミーティングと手帳に記されております。」
「ああ、大居さんね、それミーティングって名目のデートよ。うふふ。」
「左様でございましたかっ!それではデート用の身支度のお手伝いをさせて頂きます」
清水瑛作39歳 職業専業主夫兼、妻の秘書(バトラー)。
瑛作の妻、清水真奈美27歳 ブライダルプロデュース会社代表。
瑛作は元々、真奈美の会社で幹部として働いていたが、ある取り返しのつかない重大なミスにより、会社を懲戒免職になり、一旦は現場から退く。
しかし、慈悲深い真奈美は自らの秘書として会社への復帰を許される。
そして、秘書業務の他にも、生活全般の世話、家事の一切を担う条件で瑛作と建前上の結婚を強いられた。
そもそも、真奈美への強い憧れもあり、瑛作にとっては願ったり叶ったりの条件で、二つ返事で婚姻届に判を押した瑛作。
その軽い決断が、今となっては決して拭えない後悔と言う名の過ちだった。
傍若無人。
とにかく瑛作の前での真奈美の振る舞いはこの四文字に尽きる。
瑛作はただの召使、いやそれ以下の奴隷、果ては人間である事すら無視される程のモノ扱いそのものである。
唯一、瑛作の心を支えているのは、憧れの女神の傍で生かされているという事実のみなのだ。
「大居さんね、大事な取引先の社長さんでね、婚礼衣装業界じゃ知らない人がいない位の有名な方なのよ」
モリシゲのアームチェアに妖艶に足組をし、瑛作を踏み台にしながらフットネイルのケアをする真奈美は、
これからデートする取引先社長のスペックを下僕以下のモノへ淡々と情報入力をしていく。
これは所謂ルーティンであり、瑛作がデートのお共をする為には必要な儀式なのである。
「いいこと、絶対に失礼のないようにね!今日は氏が会社まで自家用車で迎えにくるそうよ、お前は運転手として努めて欲しいとのご依頼よ。ふふ、良かったじゃない!私のデートにずっと付き添えるなんて、光栄でしょう?」
「は、はい!奥様っ!大変有難きお努めでございます、ありがとうございます」
「ちょっと、お前っ!今日は秘書としての役目もあるのよ、奥様はやめなさい!社長でいいわ、社長で」
「かしこまりました、社長!精神誠意お共させて頂きます。」
「あっ、それとひとつプチ情報を教えてあげるわね、大居社長はね、、裏の顔もすごいのよ、、、うふふ、楽しみにね」
ここでいう“裏の顔”というのは、瑛作はだいたい察しがつく。
それ故に、一気に憂鬱感と恐怖心に全身を覆われ、冷や汗と妙な動機が始まってしまった。
a.m.9:45
ワインレッドのレクサスRXを真奈美の会社があるタワービルの地下駐車場へ停めた瑛作は、
後部座席に陣取る自らの妻であり女王側のドアを開ける。
特に何を言う訳でもなく、真奈美は瑛作を後に従え、地上のエントランスへ向かう。
ゲストエントランスの臨時駐車場には既に、大居氏のものであろうパールホワイトのブラバスGクラスが停まっている。
妖艶な美人、そしてその数歩後ろを申し訳なさそうに歩く貧弱な男の姿を目視したであろう氏は、2人が近づく手前で運転席から降りてきた。
「どうも、清水さん!お待ちしてましたよ~」
実に楽観で陽気な挨拶は、瑛作にとっては以外というか何とも拍子抜けしたが、その身なりや立ち居振る舞いについては、まるで格の差や次元の違いを見せ付けられる程のオーラを発している。
「社長~ごめんなさ~い、お待たせしちゃって!!」
左手をシンプルに振りながら、直線的で無骨な重量感のある四駆へ近づいていく真奈美。
その5~6歩後を重たい足を強引に小刻みに急がせるバトラー亭主の姿。
この摩訶不思議な光景も、大居氏にとってはさほど気になる様子もないようだ。実に普通である。
「いえいえ、相変わらずお綺麗で!さて、こちらが本日の運転手さんでよろしいかな?どうも、大居です、よろしく」
紳士的な振る舞いに意表を突かれた瑛作だったが、差出された右手を交わし深く礼をする。
「はい、社長秘書兼バトラーの清水瑛作と申します。本日は宜しくお願い申し上げます。」
「では、参りますか早速。キーはささったままです。行先は既にナビに入力済み。宜しく。」
美女をエスコートし、Gクラスの広々とした後部座席に座る2人を見届け、静かにドアを閉める瑛作は、そのまま運転席のある左前のドアを開け、本革のドライバーズシートに遠慮深そうに座る。
エンジンキーを入れ、ナビをチェックする瑛作は、諸々のインパネ周りを目視確認するとすぐさまアクセルを開け、ヘビー級の高級四輪駆動車を操り始めた。
「ほう、なかなか運転には慣れてるようですな、、、頼もしい。これなら安心して奥さんと楽しめますよ、ふふふ」
「あらやだ、社長、奥さんだなんてやめて下さいな。真奈美でいいですよ真奈美で」
早速のイチャつきようは、2度や3度目のデートではない事は一目瞭然。
そんな余計な嫉妬心に苛まれながらも、瑛作は自らに課せられた任務を全うする事しか出来ない。
それが管理下にある奴隷、バトラー、所有物のお役目なのだ。
全ては真奈美の今日までの調教の賜物と言っていいだろう。大居氏もまた、その敬意を存分に真奈美から聞かされ居るが故、こうして当然の振る舞いや、余計な会話もすっ飛ばした単刀直入な行動をとれるのであろう。
インテリジェンスな立ち居振る舞いは、社会生活もプライベートも変わらずと言った具合、流石である。
妙な関心と尊敬を胸に、ミシュラン製のタイヤの静寂感に優雅さを醸し出すSUVを首都高速のジャンクションへと滑らす瑛作であった。
「ところで真奈美、今日はパンツは履いて来たのかい?」
バックミラーに映るのは既に大居氏のみ。
真奈美はと言うと、なんと既に氏の股間のファスナーから一物を取り出し咥え出しているではないか。
あまりの突発的な発情モードには、瑛作も動揺を隠せずにいたが、必死で追い越し車線で速度を上げる事で運転に集中モードを切り替える事が精一杯だった。
「んぐぅ、、ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ、、んもうっ、社長ったら、、、そんな事聞かないで、、、社長、、もう知ってるくせに」
貪りつくように大居の男根に舌を這わせながら上目使いで答える真奈美。
「ふふふ、厭らしい真奈美はまたノーパンで私の元へ来たわけかっ!可愛いやつだな、、時間はたっぷりある、存分に可愛がってやろうな!!はっはっはっはっ」
なるほど、そういう関係か、、、、瑛作は察しを付けた時点で執事としての仕事内容の大凡予測準備を始め出した。
「ご主人、あんたの奥さんね、そうとうの好き者ですよ、、ご存じでした?もう完全に私の性奴隷ですよ。ははははは」
「は、はい、、、ありがとうございます、大居様」
よくわからない返事をする瑛作の事など、言い放った直後から興味のない大居は、真奈美の下半身へ手をやり、ノーパンに直穿きした黒ストッキングを無造作に破り始めた。
「嗚呼、社長、、、やめて、、、ちゅぱ、ちゅぱ、じゅぼぼぼぼぼ」
「ふん、メス奴隷が何を言ってる?そういいながらも私のいペニスを美味しそうに咥えてるじゃないか」
「うぐぅ、ぴちゃ、くちゅ、ちゅぱ、ちゅぱっ、、、はいぃぃ、ごめんなさい、、、おひひいれふ、、、社長様ぁ」
「ふふふ、ご覧の通りだよご主人、わかるね?覚悟を決めるしか道は無いぞ、いいね!」
「は、はい、、、大居様」
主従関係に余計な詮索も説明も約款毎も要さなかった。それぞれがこの光景を120%受け止め、それぞれの立場の把握と理解で全てが成り立つ。知的な関係と言えばそうなのかも知れないが、言ってみれば偏ったド変態性癖の集まり以外の何者でもない事は言うまでもない。
「それと、私の事はご主人様と呼びなさい。お前のかみさんを支配してやってるんだから、充分に崇める事だな、、ふふふ」
「は、はい、、、かしこまりましたご主人様っ。ありがとうございます」
「この先、300m先左、目的地周辺です、、、」
首都高から東北自動車に入り、数時間程を走らせ、那須高原の別荘地内に入ったのは、午後2時前。
リゾート地の広大な敷地に構えるファミリー層向け施設や遊園地を通り過ぎ、幾つかのブロックに分かれた別荘住宅の並ぶ入り組んだ路地に車を走らせた瑛作。
「ご主人様、この辺りが目的地とナビが申しておりますが」
後部座席では下半身にローターを挿入されたまま眠る真奈美と一物を露わにしながら腕組みをし仮眠する主の姿。
「着いたか、、、」
半目を開けながら周囲の景色を確認した大居は、直ぐに気丈を振る舞い指示を出す。
「次の路地、右角にログハウスが見えるだろう?その隣の家が私の別荘だ」
「かしこまりました、ご主人様。お休みの所申し訳ありませんでした」
道中、言葉遣いやその他、主への感謝の気持ちや礼の述べ方については、真奈美にペニスをしゃぶらせながら懇々と叩き込ませた大居氏。
それを既に従順に実行しているド変態マゾ夫の瑛作もまた、先天的な癖と言えようか。
北欧調の濃紺壁と真っ白な窓枠がセンスの良さと下品さのない高貴を醸し出す別荘の駐車場へブラバスのゲレンデを滑り込ませ、直ぐ主2人が君臨する後部座席のドアを開けて礼を述べる瑛作。
「大変お疲れ様でございます。ご指示通りの場所へ到着致しました」
「着いたか、、」
大居は寝ぼけ眼の真奈美をそのまま抱き抱え、コツコツと木製のエントランスデッキへ向かった。
車のキーを急いで抜き、予め指示された鍵を玄関の鍵穴へ突き刺した瑛作は、素早く開錠し、下半身丸裸でローターを突っ込まれながら眠る自身の最愛の妻を逞しく抱える他人男性でありこの屋敷、そして己の主様を通す。
「このまま私も少し眠る。お前は車の荷物を家に入れたら、夕食の買い出しとその準備、そのあと風呂場を洗っとけ。」
「か、、かしこまりましたご主人様」
早速バトラーとして用命を受けた瑛作に長距離ドライブの休息など微塵も許されない。
車へ戻り、カーナビで買い出し用の店舗を検索し、見知らぬリゾート地へと再びドライブし始めた。
車の中で散々聞かされた今日からの予定をお浚いするかのように回想する瑛作の瞼は、疲れと眠けで瞬きの時間が通常の倍は遅くなっている。
それでも、声に出して今日からの予定を復唱する事で、何とか居眠り運転からは逃れる事が出来た瑛作である。
一、今日から10日間はお二人様の休暇であり、調教合宿である。
一、私はお二人様の調教合宿の全ての雑務をこなすためにのみ存在する。
一、私の意思、尊厳は一切認められない、食事も睡眠も排泄も全て、大居様の許可制である。
一、本来の妻である真奈美様は、この10日間その全てが大居様のものであり、亭主の拒否権はない。
一、私瑛作は、大居様の所有物として扱われる為、一切の拒否を認められない。
一、私瑛作の食事はお二人様の残飯や咀嚼物のみ、飲料は小便飲みとする。
これは、ここまでの道中で、大居から頂いた誓約でるが、この内容については滞在中どんどん発展、進化させるとも公言された。
つまり、ここから東京へ戻るまでの期間で、真奈美だけでなく、その旦那である瑛作の調教プランも含まれている合宿だったわけである。
リゾート地だけあって、比較的何でも揃ったホームセンターで色々と買い物をする瑛作の胸の内は、まるで心此処にあらずで茫然自失、自暴自棄と言った具合だ。
それでもこうして従順に従ってしまう自信の阿呆さや変態っぷりに、投げやりと充実感の入り混じった特殊な居場所を感じてしまっているのも否めず、選んだこの奴隷人生を究極まで突き進むしか残された道はないのだと、己のシナプスへ信号を送信するバトラー奴隷、「瑛作」というモノ・・・だった。
・・・反響次第で続く(?)かも。
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